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最高裁判所第二小法廷 昭和47年(行ツ)57号 判決

上告人 神戸税務署長

訴訟代理人 貞家克己 外三名

被上告人 王金添

主文

原判決を破棄する。

本件は大阪高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人香川保一、同山田二郎、同鎌田泰輝、同山崎勲の上告理由について。

原審は、本件土地建物の買主である有楽土地株式会社(以下、単に有楽土地という。)から売主である被上告人に売買代金として支払われた三五〇〇万円のほかに、有楽土地が韓宗欽なる者に交付した一六一七万円も、真実は右売買代金として被上告人に支払われたものであるとの上告人の主張について、韓なる者が架空のもので、右一六一七万円を実際に受領したのが被上告人であると認めるに足りる証拠はないとして、上告人の主張を排斥している。しかし、原審の右事実認定には、次のような疑点が存する。

まず、原審は、被上告人と有楽土地との売買交渉の途中において、韓宗欽なる実在の者が、自分は被上告人が本件建物を建築した際に下請をしたが、下請代金の支払を受けていないから、同建物につき権利を有すると主張してきたこと、この主張に対し、被上告人側ではこれを否定し、その解決を有楽土地にまかせて不干渉の立場をとつたので、有楽土地において韓と交渉した結果、解決金の趣旨で移転補償費及び立退料名下に一六一七万円を三回に分割して同人に支払つたこと、を認定している。そして、右認定の資料として原判決に挙示された証拠によれば、有楽土地は、右韓との交渉に当たり、同人の主張する事実関係の有無についての調査を全くせず、また、同人の身元や住所も確認しないまま、一六一七万円という巨額の金員を同人に支払つたとされているのである。しかし、一般に会社の取引において右のようなずさんな支払が行なわれるというようなことは考えられないことであり、しかも、それが前記のような解決金の趣旨であつたとすれば、一六一七万円という端数のついた額が定められたについてはなんらかの理由があつてしかるべきであるのに、前記証拠からは、この点についてなんらの首肯するに足りる理由も見出すことができない。かえつて、記録に徴すれば、有楽土地が本件土地建物を買い受けた旨の昭和三七年八月一日付契約書には、代金額が三五〇〇万円であつて、これを、契約と同時に二三〇〇万円、昭和三七年一〇月一日七〇〇万円、同三八年二月二八日五〇〇万円を支払うことと記載されているが、一方、被上告人は、右売買と同時に本件土地の代替地として三筆の土地を有楽土地から代金一六一七万円で買い受けたので、この代金と本件売買代金のうち前記第一回分の二三〇〇万円とを対当額で相殺し、残額六八三万円は昭和三七年八月一日有楽土地から被上告人に支払われた(その後の第二回分及び第三回分の代金は約定どおりに支払われた)ことが認められるのであつて、これによると、韓あてに支払われたとされる金額は、被上告人と有楽土地との間において相殺勘定をしたとされる右代替土地の代金額と一致しているのである。この点につき、原審は、右金額の一致は単なる偶然にすぎないとしているが、経験則に照らしてとうてい首肯することができない。

また、原審の認定によれば、有楽土地が一六一七万円を三回に分けて韓に支払つた際には、そのいずれのときも被上告人が立ち会つていたというのであり、しかも、その資料として挙示された証拠によると、右三回のうち二回の支払は被上告人方において行なわれたことが認められるのであるが、これらの事実からすれば、被上告人が韓の権利主張を否定して不干渉の立場をとつており、有楽土地から韓への支払は被上告人とかかわりのないものであつたとする原審の認定は、いかにも不自然であつて、理解しがたいところといわなければならない。更に、原審の認定によれば、韓なる者は、本件一六一七万円の領収書に記載された住所には居住せず、その所在は不明であり、外国人登録もされていないというのであるから、その実在性そのものすら疑わしいのである。これに加え、本件においては、被上告人が、本件売買による収入金額を分散させて課税を免れるため、本件土地建物を被上告人から自己が代表者である大光物産株式会社に譲渡し、同会社から更に実兄の王金{亦金}を経由して有楽土地に譲渡したように作為したという事実(この点は原審の確定するところである。)のあることも看過することができない。

以上の諸点を総合するときは、前記一六一七万円は、上告人主張のとおり、真実は本件売買代金として被上告人に支払われたものであるのに、被上告人が租税回避のために、韓宗欽なる名義を用いて別個の支払であるかのように仮装したものであることを推認せしめるに十分であつて、これを否定した原審の認定には重大な疑いを差しはさまざるをえない。ひつきよう、原審の右事実の認定ないし証拠の取捨判断には経験法則違背の違法があるものというべく、論旨は理由がある。

よつて、原判決を破棄し、更に審理をつくさせるため、本件を原審に差し戻すこととし、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 大塚喜一郎 岡原昌男 小川信雄 吉田豊)

上告人指定代理人香川保一、同山田二郎、同鎌田泰輝、同山崎勲の上告理由

原判決の判断は、証拠の取捨判断において経験法則に違反し、それが原判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、破棄を免れないものである。

一、原判決は、「本件土地および建物の売買に関して三、五〇〇万円のほか、一六一七万円を有楽土地が韓宗欽なるものに対し本件建物の移転補償および立退料名下に支払つたことが認められるけれども、右金員が控訴人の収入に帰属することについて直接これを認めうる的確な証拠がない。被控訴人は右事実を推測させる間接事実として、右金額が本件譲渡資産の代替地として控訴人が有楽土地から買い受けた代金額と一致していること、右金員を受領したという韓宗欽なる者がその領収書に記載した住所に居住せず、外国人登録もなされていないことなどを主張するけれども、その主張自体右韓宗欽の受領した金員が控訴人に帰属したことを推測させるに十分とはなしがたいのみならず、(イ)控訴人が買い受けた代替地の代金は、本件譲渡資産の代金と相殺して決済されており、韓宗欽には現実の支払いがなされていて、支払方法にはまつたく関連性がなく、数額の一致ということのほかは、両者の関連を認めうるような事実が見出せず、数額の一致も単なる偶然のことがらにすぎないこと、(ロ)同有楽土地の社員である中村重之は、右一、六一七万円の支払いに際し、三回とも控訴人立会いのもととはいえ、韓宗欽と名乗る実在の人物に、その支払いをしていること、(ハ)韓宗欽は、控訴人と有楽土地との間の売買交渉の途中で有楽土地に対し、本件建物新築のときその下請をしたが、下請代金の完済を受けていないので、本件建物につき権利があると主張して来た者で、控訴人は韓宗欽の右申出を否定し、その解決をいつさい有楽土地にまかせ、自分では無干渉の立場をとつたので、有楽土地は控訴人との間の売買交渉とは一応切り離して、韓宗欽と交渉し、解決金の意味で前示金員を支払つたものであること等の事実が認められるから、右事実に徴すると、韓宗欽の受領した一、六一七万円が控訴人に帰属すると認めるのは困難である。」(原判決六丁表以下)旨判示し、この点について上告人の主張を排斥したものである。

しかしながら、原判決の右の一、六一七万円が本件資産譲渡の代金に含まれていないとした判断は、以下述べるように、証拠の取捨を誤つたことにもよるほか、明らかに経験法則に違反している違法があり、その違法は判決の結果に影響を及ぼすこと明らかである。

二、そもそも、本件のような資産の売買取引において、取引譲渡にかかる収入金額(昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法一〇条一項)の認定にあたつて必要なことは、その代金を誰が受け取つたかということではなく、支払つた代金が誰に帰属すべきものかということである。売買契約に際して、現実に売主にその代価の一部が、また残部が売主以外の第三者に手交されたとしても、代金である以上、そのすべてが売主に帰属すべきもので、譲渡にかかる収入金額にあたるものである。

しかるに、原判決は、本件の争点について、審理すべき事項を十二分に理解していないのみならず、右一、六一七万円の金員が訴外韓宗欽なる者に手交された点について、売主たる被上告人に帰属しない理由として、前述のとおり、(イ)(ロ)(ハ)の三点を根拠としているので、次にこれらを順次検討する。

1 まず(イ)についていえば、被上告人が本件資産を訴外有楽土地株式会社(以下「訴外会社」という。)に譲渡するのに関連して、代替地を訴外会社から買い受けたのであるが、その代替地の買受代金と訴外会社が訴外韓宗欽なる者に被上告人も立会いの上支払つた金額とが一、六一七万円という端数のある額において一致している場合、判決がいうように、これを目して偶然の一致に過ぎないと解することは、果して経験則上許されるであろうか。当然右の代替地の取引と訴外韓宗欽なる者に対する金員の支払が、本件資産譲渡取引に密接に関係する意義を有するものというべきであつて、その意義は、まさに訴外韓宗欽なる者に交付したとされる一、六一七万円が実質的に本件資産譲渡の代金の一部であるものとして、肯認されるべきである。

けだし、本件は、被上告人が訴外会社から本件資産の譲渡を強く要望されて、代替地を提供してもらうことを条件に本件資産を譲渡したものであるが、右代替地の代金額一、六一七万円(乙第九号証)と訴外韓宗欽なる者への分割支払代金額一、六一七万円(乙第一五号証の一、二、三)が一致していること、しかも、右代替地の代金額一、六一七万円は、韓宗欽なる人物が介在したといわれているときよりも前にきめられていたものであり(昭和三七年八月一日に代金の内金として、六八三万円(乙第一〇号証の一、二)が訴外会社から被上告人に支払われているが、それは第一回支払分二、三〇〇万円(甲第三号証)から一、六一七万円を差し引いた残額であることにつき、原審中村重之の証言参照。)、いつたん当事者間で相殺勘定がなされたが、後日右一、六一七万円を追加して現実に支払うことにしたことが明らかであつて、右一、六一七万円の支払いは、本件資産の譲渡と密接に関連しているというよりは、むしろ譲渡代金の一部であることを十二分に窺知できるものである。

この点につき、原判決は単に代替地の代金が譲渡資産の代金と相殺決済されており、韓宗欽には支払いがなされているのであるから、両者は別個なものであつて、代替地の代金との一致は偶然の一致であると判断しているが、明らかに経験則に違背しているものといわなければならない。

2 次に(ロ)についても、韓宗欽なる人物の実在性の有無の認定について、経験則違背があるといわねばならない。

韓宗欽なる人物が真に実在し介在していたのなら、被上告人側から本件事案の解明のために証人申請がなされるか、少なくともその所在や人相等が具体的に明らかにされなければならないのに、一向にこれらの措置がとられておらず、それに引き換えて、領収書(乙第一五号証の二、三)上の韓宗欽の肩書住所には居住の形跡すらなく、また、外国人登録もなされていないのであるから、上告人側から同人を突きとめ証人申請を行う手がかりはまつたくないのである。このような場合に、被上告人やその利害関係人の供述の片片を促えて、同人の実在性を認定していることは、経験則違背であるといわねばならない。

それに、本件で肝心なことは、仮に韓宗欽なる人物に一、六一七万円が支払われているとしても、それが誰に帰属すべき金員であつたかが判断されなければならないことである。仮に、訴外会社の中村重之から一、六一七万円が韓宗欽に支払われたとしても、このことがただちに右代金が被上告人に帰属することが否定されるものではなく、右代金が誰に帰属するかはさらに検討しなければならないのである。

したがつて、右認定事実をもつてしても、被上告人に右金員が帰属しない理由とはなりえない。

3 (ハ)についても、韓宗欽なる者が実際に本件建物建築の下請をなしたか否かの点であるが、この点について、被上告人は「韓という人物はまつたく知らない」(原審被上告人本人尋問調書一一丁以下)旨述べており、また、仲介人たる平井城も「韓はあのビルの工事を下請をしたが、元請がつぶれて工事代金を支払つて貰つていないので、自分は相当な権利をもつていると主張してきたものであつたが、自分(平井)としては、韓がゆすりに来たものと思つた。」(原審平井城証人調書一一丁)旨それぞれ供述している。

このような事情のもとにおいて、巷間の一買主ならともかくして、不動産業者として手広く営業し、不動産の時価を知悉している訴外会社が、被上告人すら不知と述べているのに、一、六一七万円という多額の代金を資産の買受と関係なく、理由もなく韓宗欽に支払うものであろうか。また、本件資産の売主である被上告人一、六一七万円という大金が韓宗欽に支払われるのを見過すことがありうるであろうか(被上告人の兄にあたる王金{亦金}は、三回にわたつて右支払いにわざわざ立ち会つたと供述しているのであつて、被上告人は、右大金の支払いを了知していたことになる。)。さらに下請業者で一、六一七万円もの貸倒れ債権を生ずる程の業者であるならば、その住所が不明ということ自体考えられるであろうか。

社会通念からみて、前記認定事実をもつてしては、本件金員が被上告人に帰属しないとする根拠とはなりえないものといわなければならない。

三、そもそも、裁判における事実認定は、経験則に従わねばならぬものとされているところ、本件原審にあらわれた各証拠を精査するに、つぎのように、本件金員が韓宗欽なる者に帰属したものとはとうていいえず、かえつて、それらの各証拠から経験則に照らして認定されるべき事実を総合判断すれば、本件第一審判決の認定したように、韓宗欽なる者に支払われた一、六一七万円も、本件譲渡資産の代金の一部として被上告人に支払われたものと推認できるのであつて、原判決には、証拠の取捨を誤り、経験則に違背した違法があると断ぜざるをえない。すなわち、

1 被上告人が訴外会社から買い受けた代替土地の代金額が韓宗欽なる者に交付された金額と一致しており、それが偶然の一致でないことについては、すでに述べたとおりである。

また、韓宗欽なる者に交付した金額について、仲介人たる証人平井城の供述によれば、「韓の権利内容を調査していない」(原審平井城証人調書一一丁以下)と述べており、なんの計算の根拠もないのであるから、そもそも一七万円の端数の出る余地は考えられないことである、それを単に偶然であるとしてかたづけることは、あまりにも不合理であり、経験則に反するものといえよう。

2 本件資産譲渡における形式上の譲渡代金三、五〇〇万円の約定と韓宗欽なる者に支払われたとされる一、六一七万円とが実質上本件資産譲渡の譲渡代金を構成しているものと判断すべきことは、次の事実からも推認できる。

すなわち、支払者たる訴外会社の中村重之が、「韓宗欽が出て来たのは、確かまだ王金{亦金}さんとの金額があんまりかたまつていない段階だつたと思います。」(原審中村重之証人調書三三丁)と述べているように、まだ本件譲渡資産の代金額が確定しない状態の段階で、韓宗欽なる者が現われたというのであるから、かかる場合、通常は被上告人ないし王金{亦金}は、韓宗欽の主張する権利の内容、金額の計算根拠等を当然知るべきはずであるのに、同人らは知らない旨述べていること、また中村証人自身も肝心のところはほとんど記憶がないと供述して証言をことさら避けていると窺われること(同証人調書)、さらに訴外会社からの金銭の支払状況をみても、王金{亦金}と韓宗欽なる者への支払がほぼ時期を交互にしてそれぞれ分割してなされていること(乙第一〇号証の一、二、乙第一五号証の一、二、三)、および韓宗欽は本件地上建物につき居住者でもなく、したがつてなんら権利を主張すべき地位にないこと(甲第三号証。右不動産売買契約証書第三条には韓宗欽は占有者として存在していない。)等を考え併せれば、一、六一七万円が本件資産譲渡による収入金額と関係がなく、別個であるとはとうていいえない。

3 前述したように、韓宗欽なる者は、下請業者ではありえないと推測されるのであるが、仮に下請業者であるとしても、倒産した元請会社の工事代金二〇〇万円余り(本件建物の工事代金総額は九八五万円)にすぎないことから(乙第一九号証)、その下請業者の工事代金がそれより少ないのが常識であるにもかかわらず、一六〇〇万円余の大金を支払うことはとうてい考えられないことである。

4 仲介人平井の供述するごとく、韓宗欽なる者が本件建物についてなんらの関係がなく、ゆすりに来たものであるとすれば(前記平井証人調書)、被上告人に支払われた金額が三、五〇〇万円であることと対比しても、韓宗欽なる者に支払つたとされる金額が一、六一七万円の多額であることは、余りに常軌を逸しており、かかる支払はきわめて不自然である。

また、仲介人である平井は、「向うは二、〇〇〇万円と言うていましたが一、六〇〇万円程度にまけさせた。しかし韓の住所も身元も調べたことはない。」旨述べているが(原審証人平井城証人調書一〇丁ないし一二丁)、ゆすりに来た者に買主から一、六〇〇万円の大金を出させるというのは常識を超えているし、それを身元も住所も全然知らないというに至つては、余りに非常識であり、それは結局、本件の金員が被上告人とは関係なしに韓宗欽なる者に支払われたものとすることの不自然なことを露呈しているのであつて、これらの不自然な供述をそのまま取り上げているのは、採証法則に違反することが明らかである。

5 被上告人の兄王金{亦金}、被上告人の事務所で訴外会社から韓宗欽に本件金員が渡されたときに立ち合つた旨供述しているが(原審証人王金{亦金}の証人調書一四丁)、売買代金とは別にこれ程の多額の金員が本件物件について買主から支払われるのであれば、被上告人とともに当然それに対し、なんらかのやりとり、交渉があつて然るべきであるのに、「金員の授受には立ち合つたが、そのようなことは自分には関係ない。」(原審証人王金{亦金}の証人調書一四丁)とか、「韓に金が出ていたのは知らなかつた。」旨(原審控訴人本人尋問調書一二丁)それぞれ供述し、その点についての両名の供述がまつたく不自然のまま途絶えている。

6 被上告人は、譲渡収入金額を分散させて課税を免れるため、本件売買取引に兄の王金{亦金}と自己が代表取締役である大光物産を参加させ、被上告人→大光物産→王金{亦金}→訴外会社と順次本件物件の譲渡取引がなされたように仮装したのみならず、さらに、本件物件のうち建物について、わざわざ被上告人と大光物産と王金{亦金}との間のいずれも昭和三八年四月一五日付の契約書を作成して上告人に提出し、売買取引関係者および譲渡の時期を虚構しようとしたことが明白であつて、それらの点は原判決も看破しているところである。

これらの一連の事実に照らせば、被上告人は韓宗欽なる者に金一、六一七万円を支払うという虚構を作りあげたものと考えざるをえない。

四、以上のとおり、韓宗欽なる者に金一、六一七万円の金員を帰属させるべき特段の事情はなんら窺われず、かえつて、被上告人と訴外会社との間の本件資産の譲渡取引に関して、金三、五〇〇万円以外に金一、六一七万円の金員が買主たる訴外会社から被上告人に支払われており、韓宗欽なる人物は架空人であるか、少なくとも被上告人の傀儡であると推認することが経験則上当然のことといわねばならない。

したがつて原判決の判断は、単なる事実誤認にとどまらず、証拠の取捨を誤り、経験法則に違背するものであり、それが原判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、とうてい破棄を免れないものである。

以上

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